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アイツのBLマンガにおける家庭環境と問題

※この記事はアイツのBLマンガ81話までのネタバレを含みます!未読の方はご注意ください!(もしくは1話39円なのでぜひご購入ください。)

 

 

 

アイツのBLマンガ81話が更新されました。

今までの五十嵐や相田のエピソードでも感じましたが家庭環境の差がすごい。

大抵の漫画で描写される家庭環境の差と言えば貧富の差です。お金持ちキャラがいて貧乏人キャラがいて…という感じのやつですね。お金持ちキャラは親が不在がちで寂しがり、貧乏人キャラは幼い頃から働いていたり家事をしたりと忙しい等のキャラ付けがされる印象です。

ところがどっこいアイツのBLマンガはどうでしょう。大体のキャラは中流家庭。相田は裕福な家庭の子ですが決してステレオタイプなお金持ちキャラではない。上で挙げた家庭環境の差は、貧富の差ではない家族による幸福度のことを指しています。

 

 

相田の場合

相田は裕福な家庭で両親が年を取ってから生まれた一人っ子です。箱入り娘のように大事に育てられ、塾と習い事で多忙な生活を送っています。本人も親の期待に応えようと努力し、家族仲は良好だと言えるでしょう。

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しかしそんな良い子の相田は五十嵐と出会うことで変わります。親の監視がない五十嵐家の自由さに心地よさを感じ、五十嵐家に入り浸るようになり、塾もたまにサボるようになります。結局、親にはバレてしまい制約の下で五十嵐と遊ぶように。これまで親が与えてくれた人生にはない楽しさが五十嵐と遊ぶことで得られたのでしょう。

高校受験当日。相田は五十嵐と一緒に過ごすことが自分が心から望んでいるということに気がつき、面接でその本心について語ります。しかし家に帰って両親の姿を見ると、親の期待を裏切ってしまったことに気がつき後悔。

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親の望む人生を実現することが自分の進むべき道だと考え、五十嵐への好意を封印して元の生活に戻ります。親からの愛を良くも悪くも真っ直ぐに受け止めているのが相田の人生と言えるでしょう。

 

 

五十嵐の場合

五十嵐の家族は全員亡くなっています。遠方に住む祖母の誕生日を祝いに行く途中で交通事故に遭い、香川と遊ぶために残った五十嵐だけ助かりました。

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しかし当時の五十嵐は生き残ってよかったのか疑問に感じます。そんなもぬけの殻の五十嵐を救ったのが家に遊びに来る相田。家族の代わりに相田と過ごすことを生きがいに思い、やがてそれが恋へと変化します。

祖母の誕生日を家族全員で祝うという描写から伺えるようにとても仲が良い家族だったのでしょう。そしてその心の穴の大きさが相田への依存心の大きさとなってしまったのはなんとも皮肉なことです。

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そんな五十嵐が、叔父さんの家に受け入れてもらい新たな家族を得ることで相田への依存心から脱却。五十嵐の依存心に甘えていた相田が初めて家庭のしがらみ、自分のどっちつかずな態度を捨てて告白するという流れから考えてもこの漫画にとって家族はターニングポイントなのではないでしょうか。

 

 

香川の場合

香川は中学生の頃に親が離婚して岸谷の家に預けられました。香川曰く親に捨てられたとのこと。

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更にお世話になっている親戚のこともうざいと言ってしまいます。反抗期だとしてもなかなか言えないぞ!ましてや家族を失っている五十嵐に!

香川が五十嵐に家族を失いひとりぼっちだとしても生き延びてよかったなと言ったのは、家族を失う悲しみを考えたことがないからでしょう。そもそも五十嵐が祖母の誕生日会に行かなかったのは香川から「そんなお祝いの会なんてうちではしたことがない」と言われたから。

香川は家族愛を知らないし、それを特に不幸だとも思っていません。だからこそ立派な家庭で育ち、親の期待通りに生きている相田に対して面白くないという感情を抱いたのだと思います。

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一見ヤンキーが優等生をおちょくっているこの場面も、世間から讃えられ、そして自分を期待してくれる親がいないことへの無自覚のイラつきなのかもしれません。

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相田をめちゃくちゃにしてしまいたいのも自分とはかけ離れ人生を送っているから。そう考えると失恋しようが怪我をしようが、相田を狂わせた香川の勝ちですね。

 

 

 

岸谷の場合

岸谷の両親は共働きです。海外に単身赴任をしている父親とCAの母親。家には岸谷と姉、そして香川しかいないことも多々あるでしょう。母は岸谷を信用しており、自らのカードを預けています。そして高額な買い物にも怒らない。すごいぞ、岸谷家。岸谷が言うには「父親の代わりにうまくやっている」とのこと。

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岸谷孝太郎、17歳にして家庭でうまく立ち回る。

さらに岸谷家、岸谷以外の人間は世間から不良扱いされる香川を厄介者と思っていません。むしろ可哀想な子扱い。高校中退しているのに…。この漫画の中では珍しく、家庭環境に左右されずに生きているのが岸谷です。

 

 

楢崎の場合

楢崎は両親と兄と暮らしていました。楢崎がゲイだとカミングアウトしたことによって仲の良かった家族は崩壊。父と兄は家を出て行きます。このことが原因で楢崎は他人にゲイであることを受け入れてもらえないと考えるようになり、内向的な人間になりました。確かに自分が原因で家庭崩壊だなんてなかなかショッキングですよね。

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そんないざこざがあったからか楢崎はあまり親に頼ろうとはせず、お小遣いをねだることもしません。しかし香川と違って親の愛を受けていないわけでもなく、反抗したいわけでもありません。自分のせいで家庭を台無しにしてしまったことを申し訳なく思う気持ちが強い。岸谷が親と仲良く連絡を取っているのを羨ましそうに見ているのも、自分にはできない立ち回りだからです。

そんな楢崎家ですが父親が母親と話しに来たり、家族での食事会を開いたりとなんとかして家族仲を修復しようとする動きが見られます。

兄は家族仲を取り戻すために、楢崎にゲイから足を洗ったと嘘をつけと強要しますが、楢崎にとっては自ら否定すること。

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そんな楢崎に対して母親は食事会には来なくていいと言います。なぜなら父親が楢崎の姿を見ると怒鳴ってしまうから。

しかし、母と兄、いずれの方法で成功したとしても、楢崎は幸せになれません。母の提案通り楢崎不在の三人で仲良くしても楢崎の問題から目を背け、除け者にしているだけ。兄の提案通り嘘をついても本当の楢崎の気持ちは否定することになります。結局、楢崎は食事会に行きませんでした。

そして最新話。父母兄の食事会が功を奏したのか、父親が家に帰ってくることになりました。そして、前回除け者にされ、何も問題が解決していない楢崎は家を出ることを決意します。

 

 

 

想像以上の長文になってしまいました。

五人を通してわかるのが、明らかに家族関係が性格に結びついていること。この漫画のテーマの中の一つは家庭環境なのではないかと言うことをこれからも声を大にして言っていきたいものです。

 

(画像引用 comicoより)