雑感

ヲタクの雑感

全人類よ、アイツのBLマンガを読め

ただ、キミに愛されたいだけ。

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comicoで連載中のBL漫画「アイツのBLマンガ」がすごい。何がすごいかって伏線、そしてテーマ。元々韓国で連載されている縦読み漫画な上にBL作品と一見ハードルが高そうに甘える本作品。きちんと日本人設定になっているので外国人の名前が覚えられないという人でも無問題。ちなみに上のキャッチコピーはcomicoから引用。このコピーを考えた人に宣伝会議賞をあげたいし、なんなら本作品はこのマンガがすごい!を取るべき(個人的見解)。

「BLってファンタジーなホモパラダイスなんでしょ?」と考えてBLを苦手だと思っている人にこそ読んでほしい漫画なんです。

 

あらすじ

ゲイであり、女装趣味も持ってる男子高校生の楢崎勝馬(ならさきかつま)は、女装した姿をクラスメートの相田と五十嵐にバレてしまう。
その日から、勝馬の日常はカラッと変わってしまった。
(comicoより引用)

 

楢崎勝馬は上記の通り女装趣味を持っているゲイ。女装姿で写真を撮り(盛りまくり)、ゲイコミュニティサイトで出会いを求める日々。

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可愛い顔してとんでもないやつです。

作中でも顔がいいと言われている楢崎ですが、ゲイだと告白したことで家庭崩壊を起こした過去を持ち、他人にカミングアウトをしないように心に決めています。その上男友達を恋愛対象として見てしまうことを恐れて友達を作らない。完全孤立したイケメンぼっちの完成です。

 

そんな楢崎の女装姿を見てしまったのが相田勝平五十嵐祐希

相田はお偉いさんの家に生まれたお坊ちゃんで優等生。楢崎の秘密を知ってしまったことに責任を持ち、彼を助けようとします。

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見た目の通りの堅物です。

そんな相田に反して楢崎にちょっかいをかける五十嵐。彼は中学生の頃に喧嘩で相手を再起不能にした噂が流れていたりと校内でも有名な不良。楢崎の女装姿の写真を要求して自分のLINEのアイコンにしたり、女装して遊びに来いと呼び出したりとなかなかのいじめっ子です。

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でも顔はいい。

相田曰く、五十嵐と相田は仲がいいとのこと。なぜなら中学生の時に同じクラスだったから。楢崎を囲んで喧嘩する不良と優等生。とても仲が良さそうには見えないが…???

 

というのが冒頭の流れです。

こんな拙文でもちょっと気になるなと思った皆さん、今すぐcomicoに行ってください。そして26話まで読んでください。最低限11話。11話までならすぐに読めるから。

この漫画、某カメラを止めるな!並にネタバレ厳禁。どこまで書いていいかなかなか悩みながら今この記事を書いています。

 

で、結局テーマって何よ

この漫画のテーマは「同性愛とどう向き合うか」だと思います。おそらく。

上記の通り楢崎は自分がゲイであることで、他人から距離を置かれてしまったことがあるのでインターネット上以外では決してゲイだと公言しません。そしてゲイである自分を受け入れてもらえると思えないので、他人と関わることもありません。

そんな楢崎に対して相田は「親にカミングアウトすることは理解できない」と言い放ちます。

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相田は親が用意してくれた人生のレールを忠実に守る優等生。五十嵐からは「普通の範疇に入らないことが嫌いな頭の固いやつ」と言われてしまうような人間です。つまり、相田にとって同性愛者は普通の範疇に入らない理想の人生のレールから逸れた人間という認識なのです。

一方で五十嵐はゲイである楢崎に興味津々。「女装している姿が綺麗」なんて言って女たらしみたいなことをします。

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顔がいいから許されるな。

その上「男とキスしたことはあるか」「それ以上のことはしたことあるのか」とデリカシーがないことを聞いてきたり。

相田、五十嵐双方の態度に楢崎は怒ります。そりゃあ二人から「自分とは違う人種」のように扱われるんだもの。当たり前の話です。

一方で、もし私たちの身近に楢崎がいて、ゲイだと知ってしまったらどう接するでしょうか。もし楢崎がクラスメイトだったら、息子だったら。私たちは今まで通りに接することができるのでしょうか。

 

ここから26話まで読んだ人向けのネタバレ考察、読んでいない方はスクロール推奨

 

 

 

 

 

 

実は「俺はゲイじゃないからわからないんだ」のような態度を取っていた相田も五十嵐も同性愛者です。厳密に言えば同性愛者ではなく、互いが性別を超えた特別な存在。そして両片思いです。相田は五十嵐から好かれていることを知っていますが、五十嵐は相田から好かれていることを知りません。中学生の頃に、五十嵐からの告白を相田が断っているからです。

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不良、サイコパス等ヤバいやつ扱いされる五十嵐ですが、中学生の頃の暴力事件は相田の罪を被っていたのです。相田は進学校を目指すため、暴力事件によって内申点に傷がつくと困る。相田を守るために五十嵐は自ら濡れ衣を背負います。

そう、8話で相田を一方的に殴ったのも相田がケンカをしたと周りに思われないため。五十嵐は相田のためなら何でもします。相田を狙う不良と喧嘩したり、二人の仲を結果的に邪魔してしまった相田の友達を殴ったり…完全にヤンデレです。

五十嵐には家族がいません。だから、家に遊びにきてくれる相田を家族のように思い、依存心と恋愛感情が混ざって、相田と一緒に平和に過ごすこと=自分の幸せと錯覚しているのです。

一方で相田は告白される前に、五十嵐から恋愛感情を抱かれていることを察していました。相田自身も、恋愛感情に近い感情は抱いていますが、付き合おうと踏み出すことはできません。なぜなら、上で述べたように同性愛者は普通ではないという認識を持っているからです。ただでさえ不良として有名な五十嵐と遊ぶだけで怒る親の監視下にいるわけです。五十嵐と付き合うことよりも親の言う通りの人生を送ることが最良の選択だと中学生の頃の相田は考えたわけです。

そんな相田の「普通の範疇」を壊したい五十嵐が利用しようとしたのがゲイである楢崎

普通ではない楢崎を相田に認めさせることで同性愛に対するわだかまりを解消しようとしたわけです。そんなことを知らない楢崎からしたらただのいじめな訳ですが。

一方で相田の「親が悲しむ発言」も自分が五十嵐と一緒になってしまったら親が悲しむと言う自分への言い聞かせ

そう、楢崎だけではなく、相田と五十嵐も同性愛との向き合い方に悩んでいるというのがこの物語の重要なところなのです。

 

 

 

ここまでネタバレ

 

 

 

 

 

 

BLが苦手な人にこそ読んでほしい本作品。

同性愛とは何か、そしてどう向かい合うか。

この作品で提示されている答えの一つはこれだと思います。

ただ、キミに愛されたいだけ。

 

(画像引用 comicoより)